前回は検診の概念についてお話しさせて頂きました。概念はわかった、でも実際どのくらいかかるのか、そもそも日本の検診の費用はどうなのか、今回は乳がん検診について費用という側面から考えてみましょう。
1:乳がん検診の費用ってどのくらい?
検診を受けましょう、という際にどのくらいの費用がかかるのか、この点はとても気になるところです。
ではここで具体的に乳がん検診での自己負担額が提示されている自治体をいくつか算出し、比較してみましょう。
乳がんの検診にかかる費用は大きく分けて2つあります。それは「1:都道府県が実施している検診」「2:自費費用による検診」です。
1と2の大きな違いは「検診を受診する側の費用」になります。概要の比較になります。都道府県が実施している検診に関してはおおよそ2,000円までの自己負担に据え置かれていることが多いです。
いくつか事例を挙げてみましょう。
事例1:松戸市 (千葉県)
対象年齢・条件等:30~50歳以上の女性(前年度未受診など)
検診内容:乳がん検診(問診、エコー検査、マンモグラフィ検査)
自己負担額(目安):400~1,500円
※出典:松戸市 乳がん検診
https://www.city.matsudo.chiba.jp/iryoutoshi/healthcare/kensin_osirase/nyu-gan.html
事例2:足立区 (東京都)
対象年齢・条件等:40歳以上の女性(前年度未受診など)
検診内容:乳がん検診(問診、マンモグラフィ撮影)
自己負担額(目安):500円
※出典:足立区 2年に一度は乳がん検診 セルフチェックも忘れずに
https://www.city.adachi.tokyo.jp/datahealth/20201127.html
事例3:葛飾区 (東京都) ※当院の該当地区です。
対象年齢・条件等:40歳以上の女性(前年度未受診など)
検診内容:乳がん検診(問診・視触診/マンモグラフィ検査)
自己負担額(目安):無料
※出典:葛飾区 乳がん検診
https://www.city.katsushika.lg.jp/kenkou/1000050/1001788/1034261.html
当院がある葛飾区は、申し込みを行えば原則無料で検診を受けることができます。
自治体によっては、住民登録、対象年齢、補助内容、検診可能資格(前年度に受診してるか否かなど)があります。相対的に高額な費用がかかる検査を多くの都道府県実施の検診では、おおよそ2~3,000円までの自己負担で受診できる体制が整えられています。
それはなぜでしょうか。
2:なぜ、乳がん検診の費用は据え置かれる傾向にあるのか
原価は高額な検査なのになぜ自己負担額が少ないのか。その理由には大きく分けて2つあります。
1.:「国民への検診の提供は国の責務である」
日本は2007年に「がん対策基本法」が施行されました。
※出典:厚生労働省 がん対策基本法
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/04/dl/s0405-3a.pdf
ここに「がんの予防、診断、治療等に係る技術の向上その他の研究等の成果を普及し、活用し、及び発展させること。」「がん患者がその居住する地域にかかわらず等しく科学的知見に基づく適切ながんに係る医療を受けることができるようにすること。」「がん患者の置かれている状況に応じ、本人の意向を十分尊重してがんの治療方法等が選択されるようがん医療を提供する体制の整備がなされること。」と明記されています。
がんは早期発見に努めることで完治率を高めることができるのは、以前、乳がんは予防できる?経験者が伝えたい「検診こそ最強の予防」でお伝えさせて頂きました。
※出典:小泉胃腸肛門乳腺クリニック 乳がん検診お役立ちコラム
国民のがんを予防するのは国の責務、だから価格競争ではなく公衆衛生を保つために価格を据え置くための予算が確保されているのです。
2.「検診価格を据え置いた方が結果として国の医療費を下げることができる」
乳がんは発見ステージで治療費が大きく変わっていきます。発見が遅れれば遅れるほど高度な治療が必要になり医療費もかかります。つまり、早期発見に努め早期に治療を開始した方が相対的に医療費の高騰を防ぐことになります。
3:詳細な検査を少ない自己負担で受診できる制度をぜひ利用してほしい
国は、乳がん検診を「公衆衛生を維持するために必要な政策」と捉えています。私たちの健康を維持することを社会のインフラの維持として捉え、維持するための具体的アクションとして検診者の自己負担を据え置きしています。
検診者としてその制度を活用することは私たちひとりひとりの健康を守るだけでなく医療費の高騰を防ぐことで日本の医療制度を守ることにもつながります。
ぜひ、この制度を活用してご自身、そして大事な人の健康を守ることができる乳がん検診を受けてほしいと思います。
著者:がん経験者ライター 森迫 紀子

子育て中に乳がんの手術後、家族の都合で東南アジアに移住、海外通院など特別な体験を経て(コロナ禍含む)2022年帰国。現在は文化芸術系コンテンツ制作、コーディネートを中心に通院をしている。
標準治療を相談しながら行えば、治療しながら仕事も生活も介護も実践可能なことを若い人に伝えたい。